イタリア・シチリアの海と空はどこまでも澄み切り、雲の稜線が描く淡いグラデーションは、水平線へと伸びている。白い漆喰の壁で囲まれた四角い建物が立ち並ぶ港町は、世界中からその絶景を求めて多くの人々が訪れる観光スポットだ。
その観光地チックなのどかな風景の中に黒ずくめのスーツを来た4人の男たちが海に向かって歩いていた。男たちの名前は、仮にレモン、オレンジ、キウイ、メロンとでもしておこう。日本人・イタリア・アメリカ人の国籍も見かけもばらばらな男たちには重大な秘密を持ってこのシチリアの街にやってきたのだ。
ポッポー♪
4人の中でも一番屈強なイタリア人・キウイが手に持つ白い鳩時計・Heart Clock HATOが鳴った。
「おお、ジーザス!このときが来ちまったぜ。なんてこった、マザーファッカー」
シチリアの観光地には場違いのスラング混じりの英語でアメリカ人のレモンがサングラスを外し、つぶやく。
サングラスの外したレモンの姿を見て、観光客らしき人々が何やら話している。
「あれって、カール・ルイス?」
男たちは、そんな声も気にせず、海を目指して歩き続けける。砂浜に着いた男4人は、そそくさと来ていた黒いスーツを脱ぎ、ビーチベッドに無造作に置いた。
白い鳩時計・Heart Clock HATOとともに。
ポッポー♪
その間にも白い鳩時計は、波音に紛れるようなかすかな鳴き声を上げる。
海水パンツ姿になった4人の男たちは、海に向かって歩きだす。
「ほんとに行くんですか?」日本人のオレンジが同じくメロンにささやく。
「行くしかないでだろう。ここまで来ちまったんだ。今さら、あとには、引けない」
「ヘイ!ワッツアップ?」キウイがオレンジに尋ねる。
「ダービッツ? 中田?」
ビキニの水着を来たイタリア人のスレンダーな女がささやく。
「ゴー、カモン。海まで走ろう」
レモンが大きな声を出す。
迷いを打ち消すように猛然に海に向かって、ダッシュを始める4人の男たち。
なぜか、一番年上のメロンが先頭を突っ走っている。
ポッポー♪
遠くで白い鳩時計・Heart Clock HATOの鳴く音がする。
「うぎゃー!」
海水に飛び込んだ瞬間に男たちの絶叫がシチリアの海にこだまする。
ポッポー♪
彼らは、”ぢ”を治すをためにシチリアに来たのだ。
<後編に続く>
登場人物
レモン/カール・ルイス
オレンジ/中田英寿
キウイ/セードルフ
メロン/前田耕陽
HATO小説部
OQTA HATOの小説をみんなで書き、出版を目指す部活です。
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2018.07.17 12:18