その日、私は余命3ヶ月の宣告を受けた。
2、3日はショックで、私も妻も呆然としていたが、
ベッドでHATOの声を聞いているうちに、
ある思いが浮かんだ。
それは妻には内緒にしなければならない計画だった。
4日後、私は50になる息子を病床に呼び寄せ、
自分の計画を話した。
それは、ある意味とても恥ずかしい話であったが、
あと3ヶ月しか生きられないとなると、
そんな恥ずかしさなど、まったく気にならなかった。
息子は、最初戸惑いを見せていたが、私の思いが真剣であることに気づいたのか、
途中からメモを取り、必ず実現すると約束してくれた。
1ヶ月後、息子がやってきて、すべての準備は整ったと報告してくれた。これでよかった。
最期の2ヶ月、私は自分が本当に愛した女たちに囲まれて、死を迎えることができるのだ。
「ぽっぽー」
その時、鳩が一声鳴いた。
「これは誰が鳴らしたんだ。紀子か?」
私は息子に尋ねる。
「いや誰が鳴らしたかはわからないんだ」
「ど…どういうことだ」
「HATOは、8人に鳴らすスイッチを渡すんだけど、誰が鳴らしたかはわからないんだ」
「そんな…それでは意味がない…」私は絶句した。
「どの女が俺を一番愛してくれたのか、それがわからなければ、意味がないんだ」
私は、混乱した頭で、息子を怒鳴りつけた。
「なんとかしろ。プログラムを変えるとか、やりようはあるだろう」
「無茶言うなよ」
「いや、誰が押したかわからなければ、私の計画はまったく無意味になる。
死んでも死に切れない」
もう、薄々おわかりだろう。私の計画とはこうだ。
これまで私が愛した8人の女たちに、私の余命のことは知らせずに
「HATO」のスイッチを押してもらい、
押した数によって思いの順位を決める。
そして、私をいちばん思ってくれた上位3人の女に、
私の莫大な遺産を分けてやるのだ。
(最初は妻は数に入れない予定だったが、一人すでに亡くなってしまった女がいたので、
妻も数に入れた。我ながらなんて公平なやり方だろう)
つづく
HATO小説部
OQTA HATOの小説をみんなで書き、出版を目指す部活です。
1コメント
2018.08.24 12:00